豊洲移転問題――12年ぶりの都議会百条委員会で何が明らかになったのか

昏迷深まる豊洲移転問題――12年ぶりの都議会百条委員会で何が明らかになったのか

 

2017年第一回都議会定例会が2月22日から3月30日の日程で開かれた。豊洲市場移転を巡っては、謎の地下空間や、土壌汚染対策工事完了を経てなお、基準を大きく上回る有害物質が検出され、移転は完全に宙に浮いたかたちとなっている。都民や議会に対して虚偽の報告を出し続けてきた都政の責任は重大であり、議会は、問題の所在を明らかにすべく百条委員会を設置、当時の関係者を喚問し証言を求めたが、あぶりだされたのは、都行政関係各位の無自覚・責任転嫁の姿勢であり、都庁首脳部の長である石原元知事の「部下に一任」という発言に現れる、濱渦元副知事への丸投げ・無責任体制、濱渦氏の証言と実態との間にある乖離・疑念である。

豊洲百条委員会で証人喚問に立つ、東京・生活者ネット都議[杉並区]の小松久子。3月18日

3月11日は歴代市場長や東京ガスの役員などを招致、18日からは3日連続で、濱渦元副知事や石原元知事らの証人喚問を行った。強力な権限を持つ百条委員会では、膨大な資料を読み解いて問題を質すことになるが、会派に送られた資料はダンボール100箱以上。東京ガス側からは社員のメモも含め資料として提示されたが、一方、都側の資料は十分とは言えず、しかも未整理のままであったことは驚くべき事態であり、追及の妨げになったことは否めない。契約に至るやり取りや意思決定過程の文書は、メモに至るまで公文書として残す必要があることを改めて強くした状況であった。

 

濱渦氏の証言と実態との間にある乖離・疑念――氏の偽証が濃厚になった

 

当初、用地の売却に難色を示していた東京ガスに対し、汚染があってもどうしても豊洲がほしかった都は、2000年石原知事の側近である濱渦副知事に交渉を一任。濱渦副知事をキーパーソンに、水面下での東京ガスとの交渉が始まったとされているが、その内容は明らかにされず。土壌汚染対策にかかわる負担を巡っては、2011年3月に東京ガスと結んだ協定で、将来新たな汚染対策費を東京ガスが追加負担する「瑕疵担保責任」を免責・放棄したとされる点について石原氏は「昨年初めて知った」と応答したことは、都庁首脳部の長として無責任極まりない事態であり職務放棄と言わざるを得ない。

しかして濱渦氏は、3月19日の喚問で、「2001年の基本合意以降は一切関わっていない」と証言したが、濱渦氏は2005年7月まで副知事職にあり、都と東京ガスが提出した公証記録などから2001年以降も報告を受けていたことを示す資料が見つかっている。4月4日に喚問した前川元知事本局長(現練馬区長)は、「濱渦さんは実態として市場行政の最高決定者だった。石原知事がほとんど登庁しない中で、権力を握っていた」と証言している。

 

豊洲新市場建設にこれまでに費やした経費は5884億円、これからの経費は?――建設コストや環境への負荷、長期的な事業収支などを明らかにした複数の計画案を検討すべき

 

豊洲百条委員会で証人喚問に立つ、東京・生活者ネット都議[世田谷区]の西崎光子。4月4日

豊洲の用地取得の経緯や責任の所在は不明確なまま、都行政の無自覚・無責任体質ばかりが露呈する事態となっているが、これまで土壌汚染対策や用地取得、施設建設などに費やされた金額は5884億円にも上る。銀座に近い一等地の築地市場を売却すれば、豊洲移転の費用は賄えるとの計算のようだが、仮に豊洲が開場すれば維持管理費(光熱水費など)は毎年76億5814万円! これは、現在の築地市場の15.7億円の約5倍にあたり、60億8662万円も増えることになる。さらに建物の減価償却や改修費などを考えると、事業者の負担が重くなることや税金の際限ない投入などが懸念される。

豊洲市場の取扱量を予測したのは2004年(平成16年)。すでに10年以上が経っており、この間、市場外流通が増え、消費者の魚離れもあって、市場の取扱量は年々減少傾向にある。さらに今後は人口が減少していくことも考えあわせると、豊洲に移転すれば取扱量が大きく増えるという予測には、妥当性も明確な根拠も見出せず、甘いと言わざるを得ばい。

4月4日の豊洲百条委員会では、元知事本局長で現練馬区長の前川燿男氏ら3人が証言した

今回の豊洲移転に関する混乱は、土壌汚染対策における虚偽の報告が明るみに出たことに端を発し、何度でも言うが、行政の無自覚・無責任体質があぶりだされる事態となっっている。

東京・生活者ネットワークは、こうした大きな事業については、建設コストや環境への負荷、長期的な事業収支などを明らかにした複数の計画案を検討すべきと提案するとともに、都庁の官僚体制の改革に取り組んでいくよう強く求めている。