多摩川の水干を訪ねて 

東京の水源林を歩いてきました

 戦後3番目の酷暑という今年の夏。「はじめの一滴を見に行こう!」という言葉に誘われて、多摩川源流探訪ツアーに参加した。

 京王線府中駅に集合。小型バスに乗り込み、中央高速で2時間半の作場平口から歩く。ひんやりとした空気とふかふかの土の感触が気持ちいい。ヤブ沢の水の音と緑色に輝くコケを楽しみながら山道を歩く。コケが生えている岩は山が荒れていない証だそうだ。雨量は減っているが、川の水量が増えているのは、土が深くて水源を涵養する力が充分にあるから。1時間200ミリの雨でもしみこませる力があるという。都市型洪水が多発しているが、降った雨をダイレクトに川に流さないことが大事だと改めて実感する。
 きょうの案内人は多摩川源流研究所の堀越弘司さん。大学で林学を学んだ後、東京都水道局に勤めて、ずうっと多摩川源流の水源林を守ってきたという。水と森をテーマに人生を歩んでこられたというだけに、森への深い造詣と愛情がお話から伝わってくる。

 笠取小屋でお弁当を食べ、1.5キロ先の水干をめざす。視界が開け、遠くの稜線やマルバタケブキの黄色い花がうつくしい。水干は山肌に隠れるようにひっそりとあった。葉の先から一滴、一滴と落ちてくる水は輝いていた。水干から5分ほど下ったところで多摩川の源流となる水干沢の湧き水でのどを潤した。

 今回のツアーでびっくりしたのは、この水源林が人工林だということ。明治時代に行われた焼畑農業などによる山火事でこの地域では裸山が広がり、ちょっとした雨でも山崩れや水害などを起こしていた、そこで水道事業を始めた東京府が山梨県から買い上げて、森林管理に乗り出し、植林を行なって森をつくったというのだ。山道には1922年(大正11年)に東京市議団がこのあたりを視察したときの写真があった。この荒涼とした写真から、カラマツ、ブナ、ミズナラなどの豊かな森への変貌は、人間の知恵と勤労の賜物だ。

 私たちがまちを暮らしよくしたい、地球環境を守り、次世代につなぎたいと思い、政策提案していくことが、大きな意味を持つことを確信した小さな旅だった。

 *写真左下は多摩川源流の湧き水。堀越さんがササで蛇口を作  ってくださいました。