「望まれない妊娠で犠牲になってしまう命を救いたい」

「こうのとりのゆりかご」を視察して

こうのとりのゆりかご入り口
こうのとりのゆりかご入り口
熊本県熊本市・慈恵病院に設置された「赤ちゃんポスト」。マスコミ報道からの知り得る情報だけでは、育児放棄を助長してしまうのではないかと思っていました。しかし病院を訪ねて直接お話を伺い、望まれない妊娠で犠牲になってしまう命を救いたいという思いで設置を決意された蓮田理事長と看護部長の田尻さんの熱意を報告します。
「赤ちゃんポスト」設置のきっかけは、ドイツ北部のハンブルク市の社会福祉団体「シュテルニ・パルク」を訪問し、2000年からこの町に開設された「赤ちゃんボックス」が福祉団体や私立病院に広がりドイツでは80箇所設置利用されている実態を視察されたそうです。また、2005年4月から2006年にかけ熊本県内で3件の子どもが犠牲になる事件がおきました ①天草市ではトイレで出産後新生児を絞殺。②荒尾市では新生児を産み落とした ③山麓市で女児が道の駅に置き去りされたことなど、視察と相前後しておきたこの事件が「赤ちゃんポスト」の設置を後押しすることきっかけとなりました。

「こうのとりのゆりかご」が設置されているのは、一般の患者さんが通らない、関係者専用入り口近く。キリストを抱いた聖母マリアが描かれたところにドアがあります。ドアを開けると2階にいる看護師が気がつくようになっています(24時間体制)。ドアの脇には、まず相談して欲しいということを伝える表示が書かれています。なぜなら、一度ドアの中に赤ちゃんを入れてしまうとそのドアは開けることができません。

2007年の開設から今日まで、57件の利用、(48件が生後1ヶ月未満の新生児)預けた後に連絡してくる件数は26件だそうです。利用者の居住地は熊本県内0件で関東での15件と熊本県以外の九州で14件他となっています。利用した理由として挙げられているのは世間体、戸籍に入れたくない、未婚、生活困窮、不倫、祖父母の反対、養育拒否、パートナーの問題などが主な理由です。

「赤ちゃんポスト」の本来の目的は、子どもの命を守り、母子ともども安全を確保していく。自分の子どもを捨てたり、殺したりする女性の犯罪行為を防止し、人工中絶を減らすこと。「ボックス」はあくまでも緊急避難のためのものでまずは相談窓口をもうけて機運を高めようとするものです。設置後3年間、熊本県からの利用は0であるのは、利用が進まないように行政も相談を充実している動きにあると考えられています。

現在このような場所は日本では1箇所。増やすことは望まないが、この仕組みがあることで救われた人たちも多くいることは確かです。しかしこの場を求めていく前に熊本県が0件のように、公的機関での相談の充実が必要だと感じました。慈恵病院ではこの相談を24時間3人の専門スタッフ(ボランティア)で受けています(視察のヒアリング中にも頻繁に携帯電話に連絡がはいっていました)相談が重いこともあり施設に力がなければ継続できない。また何箇所かの施設で連携していくことが望ましいとのことでした。
 視察を終えて
「赤ちゃんポスト」の設置には賛否両論があるとおもいます。しかしどうしても「赤ちゃんポスト」を利用しなければならない人たちもいることを考えていかなければならない。妊娠中から慈恵病院でカウンセリングなどを受け、出産後養子縁組をしていくなどの活動もしています。「赤ちゃんポスト」に至ることなく相談の充実で不幸な結果を招かない取り組みも進めていく。生まれてきた赤ちゃんの人権を守り大切にしていく姿勢、カウンセリングなど、相談機能が重要であること実感した視察でした。(かすや久美子)