05年介護保険制度改正にむけた視点・論点

居宅系サービスの充実と、 ターミナルケアも選択できるしくみを

 昨年12月17日、 05年の介護保険制度改正にむけた緊急学習会 「どうなる介護保険」 を開催。 当日は、 講師に服部万里子さん (城西国際大学教授) を迎え論点整理を行い、 その後、 アドバイザーの石毛えい子さん(衆議院議員)を交えて、 東京・生活者ネット都議会議員および、 都政担当政策委員を中心に意見交換と政策議論を行った。

 学習会では、 介護保険制度改定にむけた論点を、 ①被保険者の対象拡大、 および支援費制度との統合、②軽い介護度の人への生活支援の見直し、 の2点に絞った。
①については保険料徴収年齢を引き下げる案が、 特に雇用者など国民の合意を得られそうにないこと、 また、 支援費との統合については当事者の反対など議論不足が指摘され、 今回の改定では見送られる状況にある。
②は、 要支援、 要介護1などの増加が給付費の増大につながり、 安易なサービス利用がむしろ本人の生活機能低下を招いているとして、 今後は 「新予防給付」 で対応しようというものだ。
 ②について服部さんは、 「見直しの根拠となったデータそのものが妥当性に欠けており、 給付費増大の真の要因は高齢化の進展と、介護度の重い人が施設入所を選択することによる」、 国の目的は 「介護保険利用者の約50%を占める生活支援を必要とする層の利用抑制を図ろうとするもの」 と指摘。 さらに、 「サービス内容のチェックと専門員の評価というケアプランの適正化が、 ケアマネジャーを通じてのサービス抑制になっている」 また、 「新予防給付は、 認定によるサービスの限定や保険者である自治体の管理下でのプランづくりとなることから、 介護保険制度で謳われているサービスの選択性や自己決定権が失われかねない」 などの点を問題提起。

 石毛さんは、 「サービス担当者会議を機能させることで個々の自立支援に対するサービスの合同評価も可能となり、 一方的な行政の指導に対抗できる」。 今回の見直しについては、 「制度の実施主体である自治体が、自らを評価する力が不足していることが問題。 地域の住民がどのような制度を望み創ろうとしていくのか、 まさに市民参加型自治が問われている。 現場から、 地域から声をあげるとき」 と提言した。

 生活者ネットは、 年齢や障がいの有無にかかわらず、 身近な地域で必要なサービスを受けて暮らすためのしくみづくりを提案してきた。 その意味で、 介護保険制度は介護を必要とするすべての人が地域で自分らしく暮らすことを保障する普遍的な制度をめざす必要があると考える。 今回の見直しでは、 めざすべき中身より財源確保が先行し、 多くの問題を残した。 支援費との関係は、 単に問題を先送りするのではなく多様な当事者ニーズの把握・負担の問題など、 課題解決にむけた議論を始めることが必要であり、 望ましい地域社会の議論なくして、 保険料徴収年齢の引き下げや支援費制度との統合は理解を得ることはできない。

 さらに軽度介護者には身体機能の改善だけとする決め方は問題で、 生活援助は、 選択できるサービスとして介護保険への位置づけを提案したい。 自立支援を基本としたサービスが本人の生活意欲を引きだし、 在宅での生活を可能にしてきた実績に学ぶべきだ。 もちろん 「介護予防」 の視点は重要であり、 むしろ保険外のサービス環境の整備として、 地域福祉のしくみの中での検討が求められる。

 今後は、 小規模多機能型の住まいとともに居宅系のサービスを充実させ、 保健、 医療との連携により、 ターミナルケアも選択できるしくみを、 市民参加でつくることが必要である。

東京・生活者ネットワーク代表委員 都議会議員 山口文江

生活者通信№161より
詳しい内容は生活者通信でご覧いただけます。

写真
講師の服部万里子さん(右、大学で教鞭をとるほか、ホームヘルパー2級講師など)。
学習会の進行を担う都議の山口文江(左)。都庁議会棟談話室