イラク自衛隊派兵を考える視点 緊急集会報告

東京・生活者ネットワークはイラクへの自衛隊派兵に対する緊急集会を1月5日、日本青年会館で開催しました。

市民外交センター代表の上村英明さんに講演いただき、一方的な情報に頼り、不安に煽られることの危険性や、戦争や派兵への反対は、ひとり一人の市民が身近なところからアピールしていくことが重要であると話されました。

年始めの緊急集会に関わらず、100人近い市民が参加し、活発な質疑応答と各地域での活動報告を受け、集会アピールを示して閉会しました。

また、会場では1月11日のACTION111のPRが行われました。

【講演詳細】
 軍事問題を考え始めた社会は、賛成する側も反対する側も視野が狭くなる。緊急な課題であるからこそ、もう少し視野の広い話をしたい。

2003年を振り返る
 日本は国連のイラクへの復興支援決議に基づいて派兵を進めているが、国連はイラクへの戦争を合法と認めていない。あたかもこの戦争が合法であったかのようにふるまう愚かな国が日本である。
 非合法であろうが復興を支援するのは当たり前だが、「不正義」の戦争の上に「正義」の復興が行えるのか。アラブの一番の不正義は「パレスチナ問題」だが、アメリカは核兵器を持っているイスラエルを武器供与も含めて支援している現実がある。

米国国内の変化
 アメリカでは、非常に大きな権限を持ち国内の治安管理を一手に引き受ける「国土安全保障省」が設置され、国家にとって怪しいと思った人をチェックできるシステムをつくりあげている。隣人を監視して警察に通報する市民部隊もでき、監視社会になってきている。

日本国内の変化
 日本では、自衛隊を「国際協力」の組織として再定義し、簡単に海外に行けることになる。東京では、警察出身の副知事が自警団を2000団体つくりたいと表明しているが、まさにアメリカの市民部隊と同じ発想だ。不安感をメディアがあおり、治安管理が進み、不安要素の多い人たちを排除していく社会になっていく。冷静な言説は考慮されず、不安感だけが蔓延している。

9.11以降の社会は「不安感と暴力の社会」
 私たちは、今後「不安感」「暴力」と戦っていかなくてはならない。これは「他者」への想像力がないと負けてしまう。安心してともに生きる社会をつくっていくためのルールと話し合いの回復が必要である。暴力を使わなければ外交はできないという、不安感に負けた政策にNO!と言い続けなければならない。

【提言を受けて】
非暴力と正義、民主主義を、夢とともに語り、行動しよう
 戦闘の続くイラクに陸上自衛隊が出ていく。日本は、戦後、国家として外国人を殺さなかった。これは、先の大戦で多くの犠牲と貴重な教訓からできた憲法9条があったからだ。もしも、イラクの民間人を自衛隊が殺すようなことがあれば、戦後日本社会が獲得したその平和主義の価値と実績を、一瞬のうちに捨てることになる。私たちは、もう一度非暴力の視点から行う国際貢献を、そしてそれによる平和の実現を再構築しなければならない。
残念ながら9.11以降、メディアの良識や中立性は危機に瀕し、問題の本質が見えにくくなっている。私たち市民は、事象を読み解き問題の本質を捉える力を獲得するために、情報をどう読むかという集会を、草の根で同時多発的に開くなど、生活の中からの非暴力、非戦のスタイルを拡げることが重要だ。
それぞれの地域で「不安感」と「暴力」への闘いを新たにスタートさせることを今年の始まりにしよう。

●上村英明(うえむら・ひであき)さん●市民外交センター代表
市民外交センター代表、恵泉女学園大学人文学部国際社会文化学科助教授、国際人権NGOネットワーク元代表 先住民族10年市民連絡会呼びかけ人