食品安全条例の制定で食の安全の確立を

 1986年のチェルノブイリ原発事故は事故そのものの重大性だけでなく、ヨーロッパやアジアの広い地域に放射能による食品汚染を引き起こしました。厚生省(当時)は放射能の残留基準値を設け、ヨーロッパ全域からの輸入食品のうち16品目について検査を実施しましたが、基準値の曖昧さや検査体制の不備に対して市民の食への不安が一気に高まりました。
 88年、食品安全行政の確立を求める都民は、都と7区18市に対する請願を行い、続く89年、直接請求により「食品安全条例」の制定を都に迫りました。条例はできませんでしたが、生活者ネットワークの一連の働きかけは、消費生活条例の改正や食品安全確保対策基本指針の策定を実現し、食品安全に対する予算の倍増などはかられました。
 翻って、昨年9月に発生したBSE(狂牛病)事件以来、食肉表示の偽装・詐欺事件、許可されていない食品添加物の使用、未登録農薬を使用していた農産物、中国野菜からの農薬の大量残留問題など食品の安全や信頼を揺るがす事件が次々に起こり、食に対する消費者の不安は大きくなる一方です。遺伝子組み換え食品やダイオキシン汚染魚、環境ホルモン、O−157や抗菌耐性菌問題など新たに解決しなければならない問題も山積みです。
 国は国民の生命・健康保護の観点から食品安全確保に関する基本的な事項を定める食品安全確保に関する基本的な事項を定める食品安全基本法(仮称)の制定にむけて動き始め、法では、リスク分析にもとづいて食品行政を行うとし、また自治体の責務が定められる予定です。国の新しい食品行政の展開に即応した新しい自治体のシステムが必要です。さらに、国が基準を定めていない予防原則にもとづく安全性評価、トレーサビリティ(履歴追跡調査)や、表示の不備に調査・勧告権をもつ食品安全委員会の設置などが求められます。
 都は私たちの提案を採り入れ、2003年度の重要施策として食品安全条例(仮称)の検討
に入ることを表明しました。今こそ総合的な食品安全条例の制定が東京都に必要です。

都議会議員・藤田愛子