安全基準、設置者責任を明確にし、第三者による点検強化のしくみを備える「学校安全条例」の制定を

急がれる学校の安全対策

 学校の安全対策は、 事件・事故が起こる度に文部科学省−教育委員会−学校へと通達やマニュアルを送るだけの対応に終始してきた。 子どもの事故や災害を補償する学校災害給付件数を見ると、 1977年に100万件を超え、 後の子どもの数の減少にもかかわらず03年には200万件を超え深刻な事態となっている。 学校プールの排水口死亡事故では、 文科省の再発防止策が「フタを固定しなさい」と文書指導することというお粗末さで、 徹底調査は行われず、 子どもの命にかかわる事故が毎年のように繰り返されている。

 生活者ネットワークは、 05年東京政策、 続く07年自治体政策に 「子どもと学校を守る学校安全条例をつくる」 を掲げ、 国の立法化とともに、 自治体から先駆けて地域の実態にあった条例や指針をつくるよう訴えてきた。

 杉並区立杉並第十小学校で6月に起きた6年生の校舎天窓からの転落死亡事故について、 区は事故調査報告をまとめ、 8月の区教育委員会(区教委)で報告した。 それによると天窓は86年の移転改築時に設置され、 当初、 屋上は使用しないことを関係者で申し合わせていたものの校長などの異動時には引き継がれず、 89年頃から使われ始めたという。「危険に対する認識の甘さがあった」としているが、防げたはずの事故で失ったかえがたい命はもどっては来ない。今後に向ける防止策として区は6項目の安全対策を策定。 区立全小中学校での 「学校安全計画」の作成と、校長を委員長とし保護者代表と子どもが必要に応じて参加する 「学校安全委員会」 の設置を義務づけるとした。 一歩踏み込んだ対策といえるが、 そもそも今回の調査委員会は区教委に設置された内部組織で、 第3者は含まれず、 子どもの特性や行動を熟知した現場からの視点で考察がなされたか疑問が残る。

 子どもの命にかかわる問題は最優先で解決するべきで、 教育活動中の安全配慮義務の徹底とともに、 子どもの生命や安全を守る安全基準を、 人的配置を含めきちんと設け実施することは、 学校設置者である地方自治体の責務である。

 生活者ネットワークが提案する 「学校安全条例」 では、 子どもの特性に則した「学校安全基準」の作成と環境整備、 行政の責任の明確化、 事故原因の究明と未然防止をはかる第三者調査機関の設置、 さらに、 地域の人が安心して集う開かれた学校づくりを可能にする、 学校安全管理者および専門知識をもった安全職員を認定制度のもとに養成・配置するよう求めている。 そのとき十分配慮するべきは 「子どもの安心して生きる権利、 成長する権利」 を保障する環境整備であることは言うまでもない。