7月末の東京都教育委員会(都教委)は、都立中学や養護学校の教科書選定、部活動に関する規則の改正、「奉仕」のカリキュラム作成、教員の職のあり方検討委員会答申、食育推進計画など、盛り沢山の内容だった。いずれも今後の教育の行方を左右する課題ではあるが、格差社会への解決に向けたものとはほど遠く、むしろ新たな火種を蒔いたと考えられる。特に教員の職のあり方について「年功序列的な現在の処遇に対し、職責・能力・業績をより的確に評価、処遇すべき」として、職の細分化を提案しているが、今後大きな議論を呼ぶであろうことが想定される。
これまでの、憲法・教育基本法・子どもの権利条約などに反する「日の丸・君が代」の押し付けはもとより、主幹制度導入や学校経営支援センターの設置など、都教委の管理の徹底ぶりは全国的にも突出している。このような異常事態の一方で、少人数学級の導入には消極的であり、学校現場では教職員の数が減少、校務分担などに支障をきたしている。団塊世代の大量退職期は否応なく迫っており、優れた教師の確保は急務であるが、これほどの締め付けの中で東京に奉職を希望する人はどれほどいるのだろうか。
公教育への信頼を回復するためには、子どもや保護者、地域の声を真摯に受け止め、教職員の増員と自主性を尊重することが重要であり、都教委の自覚が問われている。