東京都子どもの権利擁護専門相談事業 評価・検証と事業の拡充を求めて〜第15回市民と行政の協議会、開催される

テーマは、子どもに寄り添い、支える相談・救済(1月21日都庁議会棟第2会議室)

1月21日都庁議会棟会議室を会場に、行政職員・都議会議員を含む100人の市民が集まった「第15回市民と行政の協議会」が、子どもの権利擁護をキーワードに、標記の目的で開催された(総合司会:西崎光子/都議会生活者ネットワーク・みらい都議会議員)。

いじめ自殺の問題がマスコミに取り上げられ、虐待による子どもの被害も増加の一途をたどっている。学校でも家庭でも、困難な状況にある子どもたちの救済は解決が困難な問題であり、民間を含めた関係機関の連携がこれほど必要とされている時代はないといえる。こうした状況の中、東京都が設置する「子どもの権利擁護専門相談事業」は、1998年10月、試行的に設置された第三者機関「子どもの権利擁護委員会」の5年数カ月にわたる実績を踏まえ、2004年4月より本格実施されており、①子どもからの電話相談②子どもが自由に話し、聴くことができるメッセージダイヤル③専門員による権利侵害事例の調査・調整活動——という3つの活動を持って、有効かつ迅速な子どもの権利擁護システム構築のための活動を続けてきた。

当日は、事業の要である専門員として関わってこられた弁護士の方々、東京都関係局の職員の皆さん(福祉保健局・教育庁)の参加で、「子どもの権利擁護専門相談事業」を改めて評価・検証。子ども自身からの相談が毎年事例のうちの8割を優に超える相談事業は他自治体においても例がないこと、公立私立を問わず学校現場への専門員の調査・調整に途を開いてきたことなどを確認。さらに子どもがよりアクセスしやすいしくみの検討や、オンブズ機能の強化・拡充などを実現すべき課題として共有、事業の重要性と発展を大きく展望する場となった。

さらに、子どもに寄り添い、支える活動を担ってきた社会貢献型NPO、緊急対応を余儀なくされている子どものためのシェルターを運営する社会福祉法人など多方面の方々が意見陳述。今を生きる子どもの現状・課題について事例を交えながら報告と提言があり、東京都や市区町村の役割、局間連携、市民団体との協働などについて模索・協議が積極的に行なわれた。

昨年は、国連子どもの権利条約が国内批准されて15年の節目の年であった。しかし、条約の存在さえ知らない子どもやおとながまだ非常に多いのが日本の現状ではないだろうか。子どもは待てない——国連子どもの権利委員会が過去2回の審査で日本政府に勧告している、「子どもの権利侵害にかかわるオンブズパーソンなど監視制度」を、子どもの権利擁護専門相談事業を実績に東京都から創設し、子どもの権利侵害に関する予防、相談、問題発見、救済、回復のしくみを市民と行政の協働によってつくり出すことが急務である。今回の協議会を第一歩とし、東京都から、子どもが真ん中の子どもにやさしいまちづくりをすすめる好機としたいと生活者ネットワークは考える。

<市民と行政の協議会>
東京・生活者ネットワークは、都政において市民と行政のパートナーシップで地域の特色あるまちづくりをすすめたいと考え、1994年より「市民と行政の協議会」を開催してきた。これは、特定のテーマで市民グループと行政担当部局とが政策協議を行うもので、これまで「食の安全」「ダイオキシン」「都市農業」「湧水とまちづくり」「NPO」「障がい者と共に生きる就労支援」などをテーマに回を重ねてきた。国会議員有志が仲立ちし、毎回特定のテーマでその課題に通暁した市民グループと担当局とで政策協議を行う、1983年9月に発足した「市民と政府の土曜協議会」が先例としてあるが、生活者ネットが実施する「市民と行政の協議会」は、このスタイルをヒントにスタートし、これまで地域発、自治体政治への市民意見の反映に実績を積んできた。

<意見陳述・提言者の皆さん>
●一場順子さん:東京弁護士会弁護士・元子どもの権利擁護専門員●平尾潔さん:第二東京弁護士会弁護士・前子どもの権利擁護専門員●中澤恵子さん:(特非)めぐろチャイルドライン副代表/(特非)チャイルドライン支援センター理事●竹村睦子さん:スクールソーシャルワーカー(杉並区)/主任スクールソーシャルワーカー(昭島市)●奥地圭子さん:(特非)東京シューレ理事長/(学法)東京シューレ学園理事長・葛飾中学校校長●佐藤千恵子さん:児童館職員/(特非)八王子こども福祉研究所●天野秀昭さん:(特非)プレーパーク・せたがや/大正大学人間福祉学部特命教授●坪井節子さん:(社福)カリヨン子どもセンター理事長/東京弁護士会弁護士

<主催団体:子どもの権利条例東京市民フォーラム・ネットワーク代表者の皆さん>
●司会進行(市民側):荒牧重人さん(子どもの権利条例東京市民フォーラム運営委員/山梨学院大学教授●市民側代表挨拶 :喜多明人さん(子どもの権利条例東京市民フォーラム代表/国連NGO子どもの権利条約総合研究所代表/早稲田大学教授●市民側締めくくり要望〜挨拶:森田明美さん(子どもの権利条例東京市民フォーラム事務局長/特非こども福祉研究所理事長/東洋大学教授