子どもと妊産婦を守れ! 菅谷昭松本市長からのメッセージ

東京・生活者ネットワーク2012年新春の集い

講演する松本市長の菅谷昭さん
講演する松本市長の菅谷昭さん
 2月9日(木)、東京・生活者ネットワークの2012年新春の集いを杉並公会堂で開催しました。
 第1部は、菅谷(すげのや)昭松本市長をお招きして「放射能被爆から子どもたちを守るために〜国、自治体、市民がすべきこと」をテーマにご講演いただきました。菅谷さんは甲状腺専門の医学博士でもあり、1991年よりチェルノブイリ原発事故被災地の医療支援活動に参加し現地を7回訪問。95年末に信州大学医学部第二外科助教授を退官し、翌年1月からボランティアでベラルーシに滞在。5年半にわたり、首都ミンスクにある国立甲状腺がんセンターとゴメリ市の州立がんセンターで甲状腺がんにかかった子どもたちの治療にあたってきました。
 菅谷さんは帰国後、(1)これ以上、新しい原発を作らないこと。稼働中の原発の安全性に万全を尽くし徐々に廃炉にすること、(2)自然エネルギーシフトに向け財源をシフトすべきこと、(3)電気の使い方など、私たちの生活スタイルを見直すべきことの3点を訴えていらしただけに、その無念さは計り知れません。今回の政府の対応のひどさ、危機管理能力の未熟さを嘆き、政府は国民の命を守るミッションを持っているかと深い怒りを表明されました。

 特に事故を隠ぺいしたために子どもたちが外で遊んだり、イチゴやキノコを食べたことで甲状腺ガンが事故後5年から急増したベラルーシに対して、ポーランドでは大気放射能汚染を確認したのち、すぐに最悪の事態を想定して初期予防対策を検討。事故後いち早く4月29日(原発事故より4日目)にはヨードカリ溶液剤を用意して、すべての病院、保健所、学校、幼稚園等を通して入手できるようにし、子どもたちと妊婦・授乳中の女性に内服するように指示。またその他の汚染予防対策をとったことで甲状腺ガンの増加は見られないことを例示して、日本政府の対応の遅さを批判。
 加えて低濃度汚染地域でも早産や未熟児が増加し、また免疫能力の低下のためか風邪をひきやすいとか疲れやすい(易疲労性)という子どもが増加しているそうです。

 今すべきは「日本は汚染国になってしまった」という現実を、真正面から受け入れること。国や自治体としてすべきこととして、除染対策、長期免疫学調査の実施(大気・土壌・食品・水質等の汚染調査と公表)、長期健康追跡調査と学童などに対する集団移住などの検討。特に経済的理由で移転したくてもできない家庭があることや、子どもをおんぶして除染に参加している現状を憂慮されていました。

 菅谷さんが何度も強調したのは、「あおっているわけではないんです。事実を申し上げているのです」ということ。行政の長として、生産者を守る立場もあるが、それは国が賠償すべき問題であり、子どもと妊産婦の命を守るということはゆるぎないと強調されました。原発で汚染された大地をその目で見て、現地の人々の悲しみに接し、チェルノブイリの子どもたちの無垢な体にメスを入れてきた菅谷さんの言葉をぜひ多くの政治家たちに聞いていただきたいと心から思いました。
 低線量被爆の影響はまだ解明されていないことが多い中、放射能汚染による健康被害は、自ら注意して対応するほかないが、「原発」都民投票直接請求のように、日本を動かそうと思っている、成熟した市民運動を盛り上げてほしいとエールをいただきました。

 第2部には、田中良杉並区長、保坂展人世田谷区長を始め、運動グループの方たちにも多数来場いただき交流の場を持ちました。今年は初めての試みとして、ワーカーズ・コレクティブ「ぷろぼの工房」に依頼し、東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合の皆さんの手作りのパーティ料理が用意されました。見た目にも華やかで、おいしく、例年にも増して楽しい時間を過ごしていただけたのではないかと思います。

 「原発」都民投票直接請求署名の最終日と重なったこの日、1部と2部のあいだの1時間半ほどの空き時間には、荻窪駅前での署名活動に参加した人も多くいました。私たちのエネルギー問題、大事なことは市民が決める!との意思が署名に込められています。都議会での十分な議論が実現するよう、生活者ネットワークとしても最大限の力を尽くしていきます。