東日本大震災から3年目の課題 親を失った子ども、社会的擁護を必要とする子どもたちを巡って意見交換会、開催される

第9回目となった、東日本大震災子ども支援ネットワークが主催する意見交換会が、8月30日、衆議員第2議員会館で開催されました。

東日本大震災によって、親を失った孤児は241人(岩手県94人、宮城県126人、福島県21人)、遺児は1483人(岩手県487人、宮城県857人、福島県139人)と発表されています。その子どもたちは災害によってかけがえのない親を突然失い、その後の困難な暮らしを必死に始めています。

森田明美さん(東日本大震災子ども支援ネットワーク事務局長・東洋大学教授)は――震災から3年目の課題は、親族・友人・知人を失った体験、大切なもの・家を失った体験から生活だけでなく、心も「不自由」な暮らしを強いられている子どもたちの日常的な暮らしと明日への希望をどのように取り戻すか、だ――と指摘。両親を失った子どもたちや、その子を育てる親族や里親たちの現状と課題について、おおぜいの市民、子ども支援NPOや国会議員、自治体議員、文部科学省、厚生労働省、復興庁が共通のテーブルについて、報告・意見交換が行われました。

■親族里親など被災地の里親子に関わって…ト蔵康行さん(宮城県里親連合会および日本ファミリーホーム協議会)

・宮城県での震災孤児135人の養育は祖父母60名、おじ・おば46名、他親族12名とほとんどが親族に引き取られているが、そのうち里親制度を利用しているケースは85人。安心こども基金を財源に親族里親支援事業として里親サロンを開催している。

・養育者自身の心のケアの必要性、祖父母の高齢化・健康問題で養育の継続が困難な事例、震災以前の関係が薄い場合に子育てにとまどったり、経済的負担を感じているケースがある。

・被災地域でのDV、虐待通告が圧倒的に増加しており、住環境を含めた生活環境の改善、ひとり親家庭支援、里親サロンの開催継続のための財政的な支援が必要である。

■広域に点在する親を失った子どもたちを支援する…八木俊介さん(あしなが育英会・レインボーハウス)

・あしなが育英会は、阪神・淡路大震災時、被災地に「神戸レインボーハウス」を建設し、18年間ずっと子どもたちを支える活動を行っている。東日本大地震・津波で親を失った子どもと家族同士の出会いと交流の“心を癒す家”「東北レインボーハウス」の建設を決定。職人の不足、資材の高騰などで着工が遅れていたが、石巻・陸前高田・仙台で来春完成の予定。

・子どもたちが思い切り遊べる遊戯室、どうしようもない怒りの感情を爆発できる火山の部屋、同じ体験をしたもの同士が安心して思いを話せるおしゃべりの部屋が用意される。

■地域で暮らす親を失った子どもたちや被災した子どもたちと家庭を支援する…船野克好さん(児童家庭支援センター大洋)

・児童家庭支援センター大洋は2001年、岩手県からの委託を受けて児童養護施設大洋学園に附置され開所。岩手県の大船渡市、陸前高田市、住田町(人口7万人)を活動範囲としている。

・東日本大震災に関連する活動として発災1カ月は心身の健康チェック、傾聴ボランティア、通院支援などを行い、11年、12年は岩手県児童家庭課による「気仙・子どもの心のケアセンター」事業を受託。現在まで震災による遺児孤児家庭・里親家庭への支援を行っている。

・子どもの心のケアについては児童精神科医の不足が課題。遺児・孤児・里親家庭への支援では対象を限らず、「~を中心としたごく自然な集まり」とするのが理想的。

・要保護児童対策地域協議会では虐待ケースのみが対象になりがちだが、遺児孤児・里親家庭全体やライフサイクルを見据えた包括的な支援が必要である。

・児童養護施設でのワークライフバランスを考慮した人員配置、被災地における有資格者の人材確保がケアの質に影響する。児童家庭支援センターでは相談件数の増加、活用されるほど委託費のみでは賄いきれなくなる現状がある。

 

政府による保護者を失った子どもたちへの支援について厚生労働省、文部科学省などから制度、予算の説明がされましたが、被災地の現状に沿ったものとは思えません。親族里親だけでなく、地域里親制度の創出など、子どもたちを長期的に支援する制度の必要性が会場から力説されました。

阪神淡路大震災と比較すると東日本大震災は広範囲にわたり、支援を必要とする子どもたちが多いこと、もともと過疎化が進んでいた地域で原発事故もあって復旧・復興が遅いこと、被災地への無関心が広がっていることなどの現状があります。遺児・孤児となって悲しみ、苦しみ・不安・経済的困窮の中に置かれている子どもたち、その子どもたちを支えるおとなの疲弊やいらだちが伝わってきます。

ちょうど、1年一カ月前、東日本大震災子ども支援意見交換会が院内で開催されたその日に、国会議員提案により成立した「原発子ども・被災者支援法」。その後、棚上げにされ続けてきた同法の基本計画(案)が、この日発表され、パブリックコメントが求められています。原発政策や原発事故に何らの責任のない、しかし最も放射線障害を受けやすい子どもたちの最善の利益が保証されるよう、市民として、ひとり一人がしっかり声を上げていきましょう。

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