いざというとき使えない!? 使える「介護保険サービス」へ 制度の向上をこそはかれ!

いざというとき使えない!? 使える「介護保険サービス」へ 制度の向上をこそはかれ!

 

介護の日フォーラムでは、介護保険利用者家族、介護従事者のさまざまな現場からの報告と、神奈川ネットワーク運動、東京・生活者ネットワークなどから自治体調査や意見書活動の報告がされた。2016年11月11日、横浜市の開港記念会館で

介護の日フォーラムでは、介護保険利用者家族、介護従事者のさまざまな現場からの報告と、神奈川ネットワーク運動、東京・生活者ネットワークなどから自治体調査や意見書活動の報告がされた。2016年11月11日、横浜市の開港記念会館で

2015年介護保険制度改正で、財政的な縮減要求を理由に、「要支援1・2の訪問介護と通所介護」が予防給付から外され、自治体の総合事業へと移行した。これに伴う課題抽出も検証もされないまま、今度は「要介護1・2の生活援助サービスや福祉用具貸与等」をも保険給付から外す動きがあり、現在、国の社会保障審議会で議論されている。こうした状況を広く市民に知ってもらい、次の行動につなげるために11月11日、介護の日フォーラムが生活者ネットワークも参加する同実行委員会の主催で開催された。

 

この日のフォーラムは、淑徳大学教授の鏡諭(かがみ・さとし)さんの基調講演から開始した。介護保険は加入者が誰でも等しく使える制度のはずだが、利用者は保険者総数の7.8%という実態や、いったん利用し始めると継続がほとんどということもあり、利用していない人にとっては「介護保険は(サービスは)わからない」ものとなっている。こうした背景もあり、2006年から国は負担中心の見直しを進めてきており、家族の介護力に期待する構造は依然として変わっておらず、介護を担う人は557万人、2週間に一度は介護殺人が起きている。地域で安心して暮らせるしくみとは何か。一人ひとりが考え、議論していく必要がある。

介護の日フォーラムで、講演する、淑徳大学コミュニティ政策学部教授の鏡諭さん

介護の日フォーラムで、講演する、淑徳大学コミュニティ政策学部教授の鏡諭さん

今回の改正における財務省からの強い給付削減要請では、サービスを切るための「軽度」という区分がつくられ、措置時代を思わせる「中重度」への重点化が予定されている。80代などの重度化した段階で初めてサービスを使い始めることが、いったいできるのだろうか。

総合事業については、自治体は、事業者が事業を継続できる報酬の制度や給付打ち切りとなる場合の利用者や事業者への助成など、必要なことには公費を使う覚悟が必要であり、実態を把握し議論し、給付と負担を担っていくことが求められる。さらに、自治体が直接苦情を受けることへの体制整備も必要との指摘もあった。

 

利用者家族や、介護従事者からは、現在のサービスがあるからこそ、障がい児と介護のダブルケアや老々介護、遠距離介護、在宅で10年以上生活ができているケースが多いこと、専門性の高いリハビリよりコミュニケーションがはかれる場での日常生活動作の維持が必要であることなどが報告された。

また、神奈川ネットワーク運動による、県内32自治体に聞く調査からは、保険者としての主体的な取り組みが求められるところだが、複雑な制度を前に戸惑いが見られた様が報告された。

介護の日フォーラムで報告する、東京・生活者ネットワーク政策委員長/清瀬市議会議員の小西みか

介護の日フォーラムで報告する、東京・生活者ネットワーク政策委員長/清瀬市議会議員の小西みか

東京・生活者ネットワークからは、9月議会提出に向け各地域ネットで取り組んだ「介護保険制度の保険給付から『要介護1・2』を外さないことを求める」署名活動および陳情、意見書活動について、政策委員長の小西みか(清瀬市議会議員)が報告した。陳情は7件提出され、採択3件(江東、府中、清瀬)、意見書は9件提出され、6件が可決(品川、狛江、多摩、小金井、東村山、西東京)であった。しかし、採択や可決とされたものも、「見直しの検討を慎重に行うことを求める」など漠然とした内容や、不採択とされた議会においても、他の会派から出された福祉用具貸与と住宅改修に限定した意見書については可決されている議会も多く、「生活援助の重要性」を引き続き訴えていく必要がある。

在宅生活を支える
「生活援助サービス」を
保険給付から外さないで

10月12日の社会保障審議会介護保険部会では、「要介護1・2」への支援について、まずは要支援の総合事業への移行状況を見極めた上で検討を行うべきとし、「生活援助」等の見直しは事実上先送りされることや、福祉用具については高額な価格設定を是正するための具体案が提示された。しかしながら、財務大臣は「社会保障の効率化や制度改革で不断の取り組みが必要」と強調したうえで、最終的な結論が出る年末までのさらなる議論を呼びかけており、今後の動向に注視していくことが必要だ。

「要介護1・2」という支え方、サービスは、重度化の予防につながるものであり、保険給付から外すことは、高齢者の在宅生活を脅かすばかりでなく、将来的な給付費用の増大につながり、むしろ、制度の持続可能性に対しても逆効果。特に都市部では、今後、独り暮らしや認知症の高齢者が急増することや、政府の掲げる「介護離職ゼロ」も、在宅サービスが拡充し、早期に適切なサービスにつなげられる基盤整備があってこそというものだ。

保険料を払っているのに、いざというときに使えない制度とならないように、みんなで声を上げていこう。