憲法施行70年に寄せて―自由・人権・平和、ローカルから立憲デモクラシーを回復する

憲法施行70年に寄せて―自由・人権・平和、ローカルから立憲デモクラシーを回復する

 

5月3日の憲法記念日、江東区の有明・東京臨海防災公園で、「いいね!日本国憲法 平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」が開催され、5万5千人が参加した。「集会のよびかけ:わたしたちがめざすこと 私たちは、日本国憲法を守り生かし、不戦と民主主義の心豊かな社会をめざします。私たちは、二度と戦争の惨禍を繰り返さないという誓いを胸に、戦争法の廃止をめざします。私たちは、沖縄県民と思いを共にし、辺野古新基地建設の撤回を求めます。私たちは、被災者の思いに寄りそい、原発のない社会をめざします。私たちは、人間の平等を基本に、貧困のない社会をめざします。私たちは、人間の尊厳をかかげ、差別のない社会をめざします。私たちは、思想信条の自由を侵し、監視社会を強化するいわゆる「共謀罪」に反対します。私たちは、これらを実現するために行動し、安倍政権の暴走にストップをかけます。」

多くの市民、学者・法律家らによって憲法違反と断じられた安保関連法が強行採決されて1年半、私たちは、施行70年の節目となる「憲法記念日」を迎えた。いままさに政権与党が目論んでいる、テロ等準備罪に名を借りた「共謀罪」の成立を許さないために、戦前回帰と見紛うばかりの自民党改憲草案の非道を許さないために、憲法を通低する人権の保障、立憲主義こそを堅持するために、私たちは、市民による憲法実践を進めたいと思う。

 

安倍首相の“おかげ”で国民の認識が高まった「立憲主義」。立憲主義とは、国家権力の行使を憲法の範囲内に限定し、それによって国家権力を抑制するという思想、要は“国民”ではなく“国家”を縛るための思想。市民による「下からの近代化」を成し遂げたフランスなど先行近代国家で採用されたしくみである。

 

憲法で一番大事な憲法の土台は、個人の尊重の原理

 

憲法集会では、ピーコさん、池内了さん、坂手洋二さん、山田火砂子さん、落合恵子さん、伊藤真さん、植野妙実子さん、韓国からの特別ゲスト李泰鎬(イ・テホ)さん(参与連帯政策局長)がトークに立ち、立憲野党の民進党、共産党、自由党、社民党、沖縄の風を代表する国会議員があいさつした。沖縄からは山城博治さんが歌を交えてアピール、共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会からは米倉洋子さんがアピールし、総がかり行動実行委員会の高田健さんが行動提起でしめくくった

翻って、立憲主義を旨とする、全11章(第1章:天皇/第2章:戦争の放棄/第3章:国民の権利及び義務/第4章:国会/第5章:内閣/第6章:司法/第7章:財政/第8章:地方自治/第9章:改正/第10章:最高法規/第11章:補則)からなる憲法の土台にあるのが、個人の尊重の原理。すなわち、人権について定めた第3章である。憲法のなかでこの人権規定がきわめて重要であることは、戦後の裁判や重要な学説が人権規定をめぐって積み重ねられ、高められてきたことでもわかる。「平和」も、「国会」「内閣」「司法」「財政」「地方自治」も、かけがえのない一人ひとりの人間の平等権・自由権・社会権・基本的人権を守るためのものであり、すべては人権に帰着するという考え方に立脚するからだ。

 

第3章のなかでこれを表現したのが憲法13条で、「その人の生命・自由・幸福追求を最大限尊重する」ことと定義する。さらに、「法の下の平等」(第14条)や「表現の自由」(第21条)、「両性の本質的平等」(第24条)や「生存権」(第25条)、「財産権」(第29条)といった条文が連なり、人権規定を構成する。

 

憲法は人権の保障を目的とし、その目的を達成するための手段として、「国家機関の組織と権限」と「民主主義に基づく国家運営」が書かれているわけだ。そして、立憲主義を支えるための条件は、権力者側の「法に支配されようという意思と態度」と、国民の側の「法に支配されようとしない権力者を排除する意思と態度」に拠るのである。

 

市民の憲法実践が立憲主義を救う

 

集会参加者は、クロージングコンサートに送られて、台場コースと豊洲コースの2つにわかれてデモ行進に出発した。生活者ネットメンバーも各地域から参加し、「憲法改悪反対」「戦争反対」「共謀罪法案を廃案に」「辺野古に新基地をつくらせない」「原発再稼働反対」「安倍政権の暴走許さない」の声をあげながら豊洲公園までの道を歩いた

スイス連邦憲法前文には、「自らの自由を用いるもののみが自由であり、国民の強さは弱者の幸福感によってはかられることを確信して、この憲法を制定する」とある。

 

私たちは、憲法施行70年のこの日に、自らに問いたいと思う。☑問われているのは、為政者の非立憲的態度だけなのか、☑私たち自身が立憲主義を意識してきたか、☑私たち自身が、不断に憲法を語り、憲法を活かしてきたか――と。

意識されず、語られない憲法はただの「紙片」に過ぎない。主権者たる実感が薄いまま、現政権のレガシーのために「憲法改正」が行われるようなことになれば、国家権力が牙をむくことになるかもしれない…。そういう想像力と、「国家権力の暴走を許さない、そのための鎖を握っているのは私たち市民だ」という意識と不断の行動こそが行なわれなければならない。

 

東京・生活者ネットワークは、来る2017都議選を、「自由・人権・平和、ローカルから立憲デモクラシーを回復する」大いなるチャンスと捉えたいと思う。選挙権を持たない子どもの権利保障を十二分に自覚しながら、憲法の土台・世代を超えて人権を大切にする“福祉優先のまち東京“の実現を、「チャンス!東京を変える」を合言葉に、めざしていく。