「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」7月30日招集の模様/遡る19日、新ルート計画の撤回を求める市民集会に280人が参集

 「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会(第1回)」が7月30日に開催されることが、26日わかった

日時:2019年7月30日(火)午後4時15分~5時45分 都庁第一本庁舎42階特別会議室A 構成員(座長:東京都副知事、副座長:目黒区副区長、構成員:関係22区の副区長、関係5市の副市長)

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、都心低空飛行を可能とする羽田新ルートの運用開始をにらんでの連絡会招集であろうこと、都と関係区市が議論した結果を反映させることになる、国の協議会「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会(第5回:予定)」の早期開催を目論んでの招集であろうことは自明で(国の第4回協議会は2016年7月26日を最後に開催されていない)、その内容が注目される重要な局面、連絡会となる。

新ルート計画が公表されて5年、計画の全容が明らかになるにつれ、各地域で計画の見直し、撤回を求める市民の活動や、請願、陳情活動等が活発化しており、これらを受けて品川区議会が「新ルート計画は容認できない決議」を全会派一致で採択、渋谷区議会では「計画の見直しを求める意見書」が国に提出されている。来る連絡会で関係区市の住民意思がどのように反映されるか注視する必要があるが、連絡会招集通知書面によれば、「その他」事項として「傍聴等は報道関係者に限る」としており、「情報公開」の促進と真逆の、すなわち「非公開」の連絡会としたことは大いに問題だ。

 

遡る7月19日――「都心低空飛行問題シンポジウム」(計画の撤回を求める集会)に280人が参加! 

さて、都の連絡会招集が公表されるちょうど1週間前の7月19日、大井町きゅりあんを会場に標記の市民集会が、同実行委員会の主催で開催された。本格告知から約1カ月という緊急集会であったにもかかわらず、満席の280人余が、周辺21区市から参集、「23区羽田問題プロジェクト」を立ち上げこの問題にコミットしてきた生活者ネットワークのメンバーも多数参加した。国と国土交通省が進める羽田空港新飛行ルート計画(うち2本の着陸ルートは、練馬、豊島、新宿、渋谷、目黒、港、品川といった都心部を超低空で通過)の無謀さを危ぶむ声とともに、計画の見直し・撤回を勝ち取るために、今何をなすべきか、ともに考え、次なる行動を約す場となった。

■杉江弘さん基調講演から――一番心配なのは“墜落”事故 世界に類のない危険な新ルート計画は撤回しかない!

セッション形式で行われた集会。基調講演に登壇したのは、航空評論家で、元日本航空機長の杉江弘さんだ。杉江さんは、航空機の安全運航と対極にある危険極まる新ルート計画について、ジャンボジェット飛行時間世界一の記録を更新中のレジェンドゆえの観点から、歯に衣着せぬ明快な切り口で論説を加えていく。

まずは騒音問題だ。とくに2本の着陸ルートでは、都心上空を着陸態勢に入った機体が300~900メートルの低空を通過。時間帯は15時~19時の4時間で、1時間あたり44便が通過する。窓をあけて走る地下鉄の車内並み、隣の人との会話が聞きとれないレベルの騒音が続くことになる。杉江さんによると、国交省は最近、着陸直前まで少しでも高い位置を飛ぶことで騒音レベルを減らすとして、スタビライズドアプローチ:着陸進入時降下角を3.5度(世界大原則は2.5~3度)に変更すると言い始めたという。ところが、これはパイロットにとっては(垂直落下に等しい程の)強い心的ストレスを与えることになる愚策だ、ナンセンスだと断罪(着陸前8分間に最も集中している航空機事故の事故発生率を高めることにつながりかねない変更だ)。

新ルートで車輪を出すタイミングは、新宿都庁上空から渋谷、品川の上空にかけて。脚下げに伴う氷塊の落下は物理的にまったく避けられないばかりか、落下物は氷塊に留まらないことを重々認識すべき。事実、2017年3月末までの8年間に整備点検などで航空機の部品脱落が確認されたのは451件。うち空港内で発見されたものは91件。360件はどこに落ちたかも不明というありさまだ。但し、これも国内事情に過ぎず外国の航空会社はそもそも国交省調査の対象外だ。さらに昨今では、国内外の航空機のパネルが落下する重大事故が起きている。

7月19日、品川区大井町駅前のきゅりあん(品川区立総合区民会館)小ホールで開催された、「都心低空飛行問題シンポジウム~計画を見直させるために今何をすべきか~」。シンポジウムで基調講演をする、航空評論家で元JAL機長の杉江弘さん。7月19日

そして杉江さんが最も危惧しているのが“墜落”だ。各国の国際空港は例外なく都心部から数十分離れた交通アクセス可能な周辺部にあり、航空機の安全行政にかかる基本を遵守している。これに明らかに逆行する今回の羽田新ルート計画は論外であって、成田空港の離発着枠(地元との合意を得ている年間30万回の離発着を基準にしても約5万回の余剰がある)はもちろん、羽田の現行ルートにおいても、年間3万6千回の増便などはいくらでも可能であるにもかかわらずだ(グラウンド管制がスポットを指示してのち、滑走路へ進入、タクシングから着陸にかかる一連の許可で1機につき15秒のロスを積み重ねている日本の特殊な管制事情がある)、と杉江さんは慨嘆する。

機体のわずかな欠陥や整備ミス、ヒューマンエラーが引き起こす墜落事故。その事故率は、自動操縦装置を含む巨大ハイテクシステム導入にもかかわらず減少の兆しはまったくない。事実、ここ数十年に、100人を超える死者を伴う事故と事件は198件、関わった航空機は213機である(17年2月現在)。じつは現在のハイテク機は、ボタン操作を一つ間違えたり入力ミスをしただけで墜落事故を引き起こしてしまう可能性が潜んでいるのだという。1994年の中華航空機事故は、名古屋空港の滑走路近くで墜落した事故だが、少し手前で失速していたら都市部で墜落していた可能性もあった。今回の新ルートで一番心配なのは、人口の密集する都心部を低空飛行すること。何らかのトラブルで墜落したら、最悪の悲劇が起こる。

■シンポジウムから――新ルート計画を止める!つながる、広げる、行動する

都心低空飛行ルート直下でこの問題に取り組んできた市民らが登壇したシンポジウム(コーディネーター:実行委員会大村究さん)では、まず「羽田問題のこれまで、これから」と題して、さまざまな角度から情報を交換(羽田住民が戦後、先住権を顧みないGHQにより占拠され今日の国際空港に至った歴史/裁判を含む活動を経て航空機は海から入って海へ向かって出るルートを保ってきた羽田ならではの市民の活動史/新ルート直下で保育士をする元園長からの予測される乳幼児や学齢期の子どたちに与える健康被害や悪影響、通園通学時の危険/視覚障がい者団体から、音を頼りに暮らしの安全を保っている現状(信号機の音だけでなくマンホールの位置と下水道の流れる音、自販機の振動音などを手掛かりに歩行)と低空飛行による騒音問題/国連「持続可能な開発目標SDGs」に逆行する航空行政――など)。

続いて、新飛行ルート計画の撤回を勝ち取るために「いま私たちができること、なすべきこと」が提起され、講師・シンポジスト各位、会場の参加者らの承認と明日からの協働を約す盛大な拍手のもと、次の行動計画を共有し、散会となった(▼各地の活動強化とともに、世代を超えて問題を共有するためのSNSの活用~言論空間を広げるためのポータルサイトの早期立ち上げ▼ルート直下にあたる関係自治体の首長との対話、市民に公開の場で行う議会との懇談▼都心上空低空飛行がどのようであるか、実機(整備が行き届いいている「政府専用機」を2機同時に飛ばすことが望ましい)による飛行実験を国交省に要請する▼国交省交渉に加え、万が一新ルート計画決定が行われた場合を想定し、行政訴訟=1万人クラウド訴訟=を速やかに行うための準備を開始する――など)。〈文責:編集部〉

*都心低空飛行問題シンポジウム実行委員会のブログ https://ameblo.jp/haneda2019symposium/